運命の人
若い頃の話です。
付き合っていた男性にこっぴどく振られ、それを自分の中で全く消化出来なかったワタシ。
めそめそめそめそ泣いて愚痴愚痴愚痴愚痴と女友達に話を聞いて貰っていました。
彼はワタシからの罵詈雑言を尽くした非難メールも完璧に無視していたのですが、どうした事か度々外出先ですれ違ったり顔を合わせたりしていました。
例えばとある昼下がり、国道の横断歩道で信号待ちをしていると右手から走ってくる見覚えのある車、彼はワタシを認識したでしょうが唇を固く結んで真っ直ぐ道路だけを見つめてワタシが佇む横断歩道を通り過ぎました。
また或る日は行きつけの店に行くとカウンターに座る彼の後ろ姿が目に入ったりもしました。
そんな話を延々と女友達に聞かせていたのでしたが、数ヶ月経ってもちっとも変わらないワタシに彼女は言いました。
あんたね、そんな風に会うなんて
『やっぱり運命の人!』とか思っちゃってるんでしょ。
違うから。
近所だから。
同じ街に住んでるだけだから。
。。。
熱に浮かされたように、狂ったように、いや多分狂ってたんだな、元カレの話ばかりするワタシの頭を冷やしてくれた女友達でした。
さすがに黙っちゃいますね、こんなズバリ指摘されたら。
結局この元カレを想いすぎて泣いて暮らした日々は、500円玉大のハゲを三つも発見したことにより終わる事となりました。
駆け込んだ皮膚科の先生に
痛いけどすぐ効くやつと
痛くないけどゆっくりなやつ
どっち?と二択を迫られ、当然の如く痛いヤツを選択しました。
そして週に一度、ハゲの周囲にプチプチと針を突き刺されに通ったおかげで500円玉より大きくなりつつあったハゲは何とか髪の毛を取り戻し、髪への執着と反比例して元カレへの執着を失いました。
運命の人では無かった、という出来事でしたが、スピッツは変わらずに好きです。